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~midnight in taxi~

【過去のブログより転載】

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

今日は僕が見習いの頃の話をします。

コンピューター会社をやめて無職の僕に、「暇だったら現場に遊びにこいよ。」と声をかけてくれたのが当時の僕の親方です。彼は悪気はないのですが、今思えばあまり人の使い方が上手くなく、昔ながらの職人というか、頑固親父といったところでした。彼に怒鳴られながらも僕は今までのスーツにネクタイというスタイルと全然違う世界が毎日楽しくて楽しくてしかたありませんでした。僕は毎日真っ黒になりながら一生懸命働いていました。

そんな頃です。コンピューター会社の先輩に二人で会社を創ろうと誘われました。彼もまたコンピューター業界では実績を上げている人で、僕の実力も買ってくれていて、正直嬉しかったのですが、初めて知った青空の下で汗を流しながらする仕事に魅了されていた僕は迷うことなくお断りしました。しかし、その後も先輩の猛烈なアタックは毎日続き、3ヵ月後・・・僕は熱心に口説かれる女性の気持ちが少しわかったような気がしました。僕はついに負けて、今までのコンピューター業界で先輩と会社を創る決心をしたのです。

それから数日後、僕は事情を話すために同い年の親方を飲みに誘いました。

なかなか話が切り出せずに居酒屋で二~三時間も関係ない世間話ばかりしながら僕は「なにしてんだ俺・・」と心の中でつぶやいていました。そして、「じゃあ、そろそろ帰るか・・・。」と言う親方の声に慌てて、「も、もう一軒・・・」と僕はさけんでいました。

二軒目のカラオケスナックで一曲歌ったあと、僕は「実は・・・」とやっと事情を話しました。当然、話を聞いて驚いて止められるものと思っていました。しかし、彼は、

「そういうことだろうと思っていたよ・・・。」

「がんばれよ・・・。」

力が抜けました。僕はもしかしたら、止めてくれることを期待していたのかも。もし止めてくれれば、コンピューター会社の話は断るつもりでいたのかもしれません。

店を出て、タクシーに二人で乗り込むと、僕らは目も合わさず、一言もしゃべらず、お互いに別々の窓から外を見ていました。そして、どれくらい時間がたったのか、彼が相変わらず窓の外を見ながらポツリと言いました。

「なぁ・・・。」

「ん・・・。」

「もしダメだったら・・・ また戻ってこいよ・・・。」

「あっ、運転手さん。そこで。」

彼は、僕が帰れるくらいの料金を置くと、「じゃあな。」と言ってタクシーから降りました。

走り出すタクシーの窓から外を眺める僕の目から涙がこぼれました。

それから、コンピューターの会社を立ち上げてから半年の間、僕はその日のことをずっと忘れられずに過ごしたことを彼には言えませんでした。

「やっぱ、ダメだった。」

そう言って半年後、僕はまた同じ青空の下にいました。

 2006年1月 8日 (日) 日記・コラム・つぶやき

鍛治工事・現場溶接工事は東京の斉藤工業へ!

 

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